ポバールの特徴
水溶性
ポバールは水溶性ポリマーで、水には任意の比率で溶解します。
ポバール水溶液は適当な粘度を持ち、様々なものに塗工し、乾燥することによって表面皮膜を形成することができます。
耐溶剤性
ポバールはDMSO(ジメチルスルホキシド)などの特殊な溶剤と水にしか溶解しません。一般の有機溶剤、動植物油、グリースに対しては溶解せず、安定です。
接着力
ポバールは水酸基を持っているため、紙、木材のような親水性の表面を持った物質に対して、強い接着力を示します。
化学反応性
ポバールは水酸基を持っているため、アセタール化反応やホウ酸、ホウ砂との反応等による改質を行うことができます。
皮膜形成性
ポバールは造膜性に優れ、フィルムは透明性が高く、高強度、ガスバリア性、防曇性、非帯電性等の優れた特徴があります。
界面活性能
ポバールは親水性の水酸基と疎水性の酢酸基を持っているため、界面活性能を示し、乳化・分散性に優れます。
安定性
ポバールは安定した高分子化合物で、一般環境下では変質や劣化は起こりません。
重合度とけん化度の影響
ポバールの特性は、重合度および けん化度に影響を受けています。
下表に基本的な特性に与える重合度及び けん化度の影響度合いを示します。
特 性 | 重合度 | けん化度 | ||
低い | 高い | 低い | 高い | |
低重合度品 | 高重合度品 | 部分けん化型 | 完全けん化型 | |
水溶液粘度 | ||||
低温粘度安定性 | ||||
皮膜強度 | ||||
水溶性 | ||||
耐水性 | ||||
乳化力 |
矢印の本数が多い方が、より影響が大きいことを示します。
水溶液粘度
水溶液の濃度-温度-粘度の関係(B型粘度計による)
完全けん化型
部分けん化型
水溶液の安定性
水溶液の表面張力
- 重合度:1700
- 水溶液濃度:0.2%
- 測定:ウィルヘルミー法
ポバール水溶液の表面張力は、けん化度が高いものほど大きく、けん化度が低いものほど小さくなります。
皮膜物性
皮膜強度
- けん化度:98.5モル%
- 引張速度:50mm/min(20℃65%RH測定)
ポバール皮膜は、重合度が高くなるほど強度が高くなります。また、熱処理を行うと結晶化が進み、さらに強度が高くなります。
皮膜耐水性
けん化度と不溶分率の関係
- フィルム:ポバール水溶液を流延、室温にて乾燥した40μm厚みの皮膜。
- 測定条件:各温度の水にフィルムを浸漬し、溶断時間を測定。
フィルム溶解性
ポバールの重合度:600
ポバールの重合度:1700
- フィルム:ポバール水溶液を流延、室温にて乾燥した40μm厚みの皮膜。
- 測定条件:各温度の水にフィルムを浸漬し、溶断時間を測定。